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達成
- 2014/08/19(Tue) -
RIMG0079-001.jpg
2014.8.13 RicohPX 国境近辺にて

「あれこれ考えたってどうせ思い通りにはなんねぇ。だったら飛び込め、なんとかなるもんだ。死にたくねぇからな」
と夏ばっぱ。
ついに自分の目前も四の五の言ってられない状況になった。海が兆候もなく急に流れ始めた。スピードが出ない。7km/hペースで来ていたが一気に5km/hを切った。海流に真正面に向かうと3km/h以下となる。10時の時点ですでに、対馬の佐護15時半着は不可能なことは明らかだった。税関、保安庁に遅れる電話を入れる。「17時頃になります」と。心の中では間に合わないだろうなと思いながらも。
その間手を止めれば進行方向とは逆の北東にぐいぐいと2km/h~3km/hのスピード流されていく。いたって穏やかな海の中に目に見えぬ強さがあった。先に進むか戻るかで常に自問する。まだ戻る体力は温存しているしリスクは低い。流れの強い海流があとどのくらい、あと何時間続くかだ。そして自分の気力と体力がどこまで耐えられるかだ。行くか止めるか決断が遅れればそれだけリスクも高まる。漕ぐ手を止めたところで誰も助けてはくれない。
12時間、いや20時間漕いでも漕ぎ続けられる体力はある。夜間航行の準備も一応してある。天気は明日の朝まで穏やかで波風が高まることはない。よし行こう。何時間かかろうと対馬のどこかにへばりつければそれでいい。

しばらくすると長いこと距離をおきついてきた海洋警察の船がぐっと近づいてきた。「あなた流されてます。これ以上は危険だから進まないで下さい」とでも言われるのかと思ったがそうではなかった。
「さよなら~、さ、よ、なら~」操縦室あたりで手を振っている人が見える。「さよなら」という言葉は悲しい響きであまり使わない。「じゃあね」というのも間が抜けている。面倒なことに付き合わされたに違いないのに、彼らはいつまでも手を振りながら船は大きく西へと旋回していき気づけば見えなくなっていた。一緒に韓国帰りたいと思ったが、彼らが引き揚げていったということは日本の領海にまで来ているということだ。
静寂。
今は強い流れを船の横で受けながら並行移動するフェリーグライドという方法であえて流れされながら、海流の島影まで回り込んで進むと決めた。この作戦にしかない。
もともと流れを想定して対馬の北側西よりの港をターゲットにしていた。今の流速の中をまともに向き合い漕ぎ続ければ早いうちいつか体力が尽きジエンドだというのは分かっていた。であればあえて流されるしかない。すでに現在の進む方向にそのまま向かえば島をギリギリアウトでかすめていくライン取りになっていた。もはや手を止める暇はない。国境でカヤックから海に飛び込み体で国境線をつくるバカな写真を撮る夢も潰えた。

視界に鳥以外生き物の姿はなくなった。鯨が出ると対馬で脅されたが不思議と恐怖はない。漕ぐしかないからだ。
数時間漕いで到着時間を割ったり掛けたりして計算すると到着は夜になりそうだった。17時が、後に19時とどんどん遅くなってしまう。検疫の方だけは必ず上陸地にこなければならず待たせなければならないのが申し訳ない。
長く全力で漕ぎ続け、次第に対馬方面へと船を向けてもスピードが落ちなくなったことが分かり、海流の強い流れから抜け出したことが分かった。夕刻になり風も背中側から吹いてきたためかとも思ったが少し楽なパドリングとなった。しかしまだ島影は見えていない。

残り20km。18時半頃到着が見込めてきた頃になってちらちらと対馬の姿が見えてきた。ひょっとすると雲の切れ間かもしれない。
僕は長くこれがやりたかったのだ。日本に帰ってくる、その方法として動力は自力で。
長くかかった旅もこれで10カ国目。最後の国日本に帰ってきた。昨日対馬にいたけれど、気持ちの上ではまだ途上だった。海流が逆境でも手続きが大変でも韓国側から日本にカヤックで帰りたかったのだ。ようやくそれが見えてきた。
しかしいつも通り見えてきてからが長い。15Km。少し安心できる距離となる。スピードだいぶ上がってきた。だが忘れていた。島の周りには、特に北端や南端といった島の端っこには潮がきつく流れているということを。そんないつもの単純なことすら忘れて潮がこの時間どちらに流れるのか調べてもいなかった。

カヤックは再び流され始めた。島影に回ることも叶わず大きく手前で南に引き寄せられていた。辺りは次第に暗くなり、陸が見えているというのに、スピードが出ているのに近づけずにいた。そして日は沈み暗闇に。漁船がうろうろしている中でちっぽけなカヤックは安全ともいえない。ストロボを焚いて再び全速力で漕ぎ始める。
灯台もあまりなく海から町の明かりが見えなかった。入り組んでいるために隠れているのか僕のナビが狂っているのか。次第に焦り出す。すぐそこには陸地で砂浜上陸してしまってもよかったが、検疫がそれを許してはくれないだろう。それに相当長い時間待たせている。
明かりが見え近づくと大きい漁船だったりする。まだ満月は空にあがってこない。ついには携帯の充電も1%となった。
鰐浦港というのが僕がたどり着いた港だった。暗くなり目標点を見失ったが、夕方保安庁に告げていた場所に着いた。
港の奥についても人の姿はなく、しばらくカヤックの中で人が来るのを待つ。検疫の方に上陸しないで待つようにと指示されていたからだ。
警察、海上保安官、検疫の方がお出迎え。取り締まりというか質問というか尋問が続き、居心地悪かったが、最後に始めてみる笑顔で「どこが一番きつかった?」と聞かれ、何とか無事着いたのだという実感を得たのだった。

翌日、温泉で体重計に乗る。多分この1日で2kgは減ってる。それでも4月の最大体重から一時的でも14kgの減量完遂。タブルで目標達成となった。

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コメント
--
月の女神でございます。

おかえりなさいませ。

手続きがものすっごく色々あるんだね。
この過酷な旅をするにあたり、トレーニングはするんですか?
筋トレ?近くの海でこぐとか?
2014/08/23 02:58  | URL | ともみ #mQop/nM.[ 編集] |  ▲ top

-Re: -
その節はありがとね。多少は体動かしておかないと筋力もたないね。今回は肘が炎症で真っ赤っか。
2014/08/23 16:33  | URL | Re: ともみ #-[ 編集] |  ▲ top

-ご無沙汰。-
先週末、AUSで会った人に18年ぶりに再会して、当時の思い出話なんかをしていたら、ヤスシのことを思い出した。
facebookで検索したらヒットしたから、友達リクエストしておいた。
海外とか全力で旅していて驚いたよ…!
死なない程度に頑張ってくれい。
2014/08/24 20:33  | URL | 茂樹@岐阜県 #tbU4LQaE[ 編集] |  ▲ top

-Re: 茂樹-
5、6年ぶりか?久しぶり。んでよくこれ見つけてくれたね。基本ビビりだから死なないぜ、何やるにしても。
FBリクエストサンキュー。外出てない時はあまり使ってないんだけど、関東方面来る時は連絡してー。カヤックできるよ。
18年前の夢かなって18年前のチャリ友からアクセス入るなんて嬉しいなぁ。
2014/08/24 20:47  | URL | Re: 茂樹 #-[ 編集] |  ▲ top

-リアルな体験-
リアルな体験は、やはり事前にお話聞いていても、読んでいてドキドキしてきました。
改めておめでとうございます。

9月になりましたので、野毛あたりで一献よろしくです。
2014/09/01 19:22  | URL | Hiro #-[ 編集] |  ▲ top

-Re: Hiroさん-
思い出すとドキドキします。野毛辺りで自慢話ぜひ聞いてやって下さい。近々連絡します。
2014/09/02 00:46  | URL | Re: Hiroさん #-[ 編集] |  ▲ top


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